研究概要 |
[流路形状の最適化] 本研究ではこれまでY字型の流路を用いていた。しかし、Y字型では加熱部位が近接しているため、加熱位置切り替え時の放熱効率が悪く、検出後のゾル-ゲル転移時間に遅延が生じていた。そこで、T字型の流路形状を採用し、深さ5μm、幅10,15,20,30μmの石英製およびパイレックスガラス製のマイクロ流路デバイスの製作・評価を行った。結果、幅10,15μmの流路では現在使用可能なシリンジポンプでは流速制御が難しく、幅20μmの流路が最適であった。このときの送液流量は0.01μL/minである。流路分岐部にはCr薄膜を幅10μmで部分蒸着し、加熱効率の向上を図った。この流路での検出分離時間は33ms以下であり、ビデォレートの画像では検出部直後0〜10μmの範囲で流れ方向を変え、回収側バルブ部下流に静止した状態が33msの積算像である輝線として確認された。 [回収系・フィルタ構造の組み込み] 分離後の試料は少ない溶液量に濃縮分離されるため、デバイスから排出されるまで分離を続けることは困難であった。そこで、分岐上流の入力部に流路を追加、し、排出用溶液にて圧出する系を構築した。排出用溶液には同濃度のメビオールゲルを添加して粘度を等しくすることで、分離後の試料をデバイスの出力穴外部まで圧出することが出来た。また、これまで流路幅以上の大きさを持つ異物の混入によって流路が封鎖されることが頻繁にあった。そこで、入力流路入り口にフィルタ構造を組み込んだ。 [検出感度の向上] これまでの検出系では、光電子増倍管の直前に円形の固定スリットを使用していたが、新たに可変型の方形スリットを組み込んだ。また、照明系に高出力半導体レーザーを利用し、可変型方形スリットにて照明範囲を限定した。検出範囲の大きさは、焦点深さ方向のズレによる輝点の広がりから、焦点面で流れ方向に5μm以上、流れ垂直方向に流路幅+10μmとした。
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