研究課題
本研究では、前年度までに確立した分離装置を用いて生体分子の分離を試み、装置の性能評価を行った。1.Y字型マイクロ流路での分離評価試料としては大腸菌に蛍光タンパク質であるGFPまたはDsRedを発現させたものを使用し、DsRed大腸菌、GFP大腸菌が混在する中から、GFP大腸菌を検出・分離することに成功した。また、サンプル溶液の流速・それぞれの大腸菌の濃度を変えた場合に分離後のGFP大腸菌純度がどのように変化するかを検討した。結果、サンプル溶液の流速を1~15nl/minに設定した場合にほぼ安定した状態で分離することが可能であった。15nl/min以上では転移させたゲルが押し流されてしまい、流れ制御が不可能であった。分離後の純度はサンプル溶液の流速にほとんど依存することなく一定であった。一方、大腸菌の濃度を変化させた場合には、DsRed大腸菌の濃度を増やすに従い、GFP大腸菌の分離後の純度は低下した。この結果より、本分離システムは一定液量のサンプル溶液を流し分けることが可能であり、また、10^7cells/mL以下の濃度であれば、80%以上の純度で分離できることが分かった。2.1分子蛍光の検出タンパク質や核酸など生体分子を1分子で検出・分離するために、蛍光色素1分子の検出を可能とすることを目指した。前年度までに励起光をスリットで検出範囲のみに制限することでS/Nの向上が見られていたが、プレパラート上においても蛍光色素1分子の検出は不可能であった。そこで、蛍光励起に使用するレーザーをシリンドリカルレンズでライン状に集光させることでS/Nの向上を図った。また、色素としてストークスシフトの長い量子ドット(励起:488nm、蛍光655nm)を選択した。結果、プレパラート上において、検出範囲1μm×20μmに存在する量子ドット1分子の蛍光をS/N>3で検出することが可能となった。
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Analytical Chemistry 78
ページ: 695-701