亜熱帯島嶼地域における経営間連携の一つとして、大規模借地を進める経営体と小規模農家との連携がある。そこでは、農地の貸借がポイントとなるが、これまで亜熱帯島喚地域における農地市場に関する研究は少ない。そこで本研究では、両者の連携課題を明らかにするために、佐敷町F集落において借地を進める生産法人3社と同集落農家の悉皆調査によって、沖縄本島南部地域における農地市場の構造と特徴、および農地の貸し手側の論理について分析を行い、次のことを明らかにした。 1.同集落農家の農業継続の意欲は強いが、余剰農地は比較的柔軟に貸し出す傾向にある。 2.借地による経営拡大を望む農家が他にほとんどいない中で、農地は生産法人に動いている。 3.そのため農地の親戚外への賃貸借が進展し、「預け預かり」は形の上では揺らいでいる。 4.貸し手が望む相手は、きちんと農地を管理し、必要時に返却してくれる人であり、その場合、相手の居住地は集落外でもよく、小作料の水準も重要ではなかった。 5.親戚外・賃貸借という点で形の上では預け預かりも変化しているが、柔軟(≒不安定)さと、小作料水準は重要でない、という基本的な性格は変わっていないと言える。 6.今後も農地は農家から放出されることが予想されるが、こうした農地貸借の性格は大きくは変わらないと考えられる。そのため借り手側としては、今回の調査対象と同様の性格を持つ農家に対して、農地管理と返却対応が重要であり、相手居住地や小作料水準を重視する必要性は小さい。
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