研究課題
大きく分けて2つの研究をおこなった。第一は、外国為替のレート変動のダイナミクスに関する研究である。円ドル為替の秒単位のレート・取引間隔・ボラティリティのデータに対して、重み付き移動平均の解析をおこなった。その結果、それらのデータは、ARタイプの移動平均と、無相関なノイズに分離できることが分かった。そのときの重み付き移動平均の長さは、過去30秒程度であった。次に、このような特徴を持つレート変動モデルを導入し、現実のレート変動の分布・自己相関・ボラティリティの統計的性質を再現した。この結果、これらの統計性は、為替ディーラーたちが過去のレート変動の結果を、将来の価格変動決定にフィードバックするメカニズムが原因で引き起こされていることが明らかになった。第二の研究は、円ドル為替市場における日本銀行による市場介入の効果を調べた研究である。介入時刻は、一般に公開されていないが、介入後、レートの上昇と下降に非対称性が発生するために、この特徴を用いて介入時刻を20分程度の誤差範囲で推定することが可能である。これは、介入時刻が公開されているアメリカの中央銀行による介入事例で調べた。この推定された介入時刻を用いて、介入後のレート変動と介入金額の関係を調べた。この関係は線形の関係であり、約一兆円の介入で、円ドルレールを数時間のうちに平均1円動かすことが出来ることを示した。また、介入の影響で変化したレートは、平均的には介入前のレートに戻るような性質がないことも示した。すなわち、市場介入はレートを制御するのに役立っているといえる。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件)
Practical Fruits of Econophysics (Springer Verlag, Tokyo. 2006)
ページ: 33-37
ページ: 57-61
ページ: 62-66
ページ: 29-32