研究概要 |
腸管病原性大腸菌(enteropathogenic E.coli, EPEC)は腸管上皮細胞に付着感染し、上皮細胞バリアー機能を障害し下痢を引き起こす。EPECの病原性発現にはtype IIIタンパク質分泌機構が深く関与している事が知られているが、上皮バリアー破壊の分子メカニズムは明らかになっていない。本研究によりtype III装置によってEPECが分泌するEspGとEspGと相同性を有するOrf3が宿主細胞のtubulinと直接結合し、微小管の脱重合を促進する働きを有していることが明らかになった。さらに、EspG/Orf3の微小管への作用により活性化される宿主細胞内伝達経路を明らかにする目的で、宿主細胞側の各分子の特異的阻害剤や優勢不活性型、siRNAを用いた実験を行った。それらの解析によりEspG/Orf3が宿主細胞側の因子であるGEF-H1やRhoA、ROCKの活性化を誘導し、最終的に、アクチン細胞骨格の再編成を誘導することが明らかになった。 近年、Tight junctionやadherence junctionによる細胞間接着の機能維持にはアクチン細胞骨格が深く関与していることが明らかにされている。さらにGEF-H1分子は細胞間接着部位に局在し上皮細胞の透過性を調節している事が報告されており、本研究において観察されたEspG/Orf3による微小管の消失を伴うGEF-H1やRhoAの活性化はEPEC感染による上皮細胞バリアー機能障害作用へ関与していると考えられる。
|