本研究では、MeVガンマ線観測を行う検出器として半導体コンプトン望遠鏡を開発するとともに、実際に観測を行うための小型衛星の開発を行っている。本年度は、コンプトン望遠鏡の試作機を開発と小型衛星の設計として機上データ処理部を中心に行ってきた。 コンプトン望遠鏡としては、Si半導体検出器とCdTe半導体検出器を組み合わせたものを開発しており、本年度は、両面Siストリップ検出器を6段スタック状に重ねたものと3つのCdTeピクセル検出器を組み合わせたものを製作し、これを用いて、実際にデータを取得し、ガンマ線源のコンプトンイメージ、エネルギースペクトルの取得に成功した。得られたコンプトンイメージの角度分解能、エネルギースペクトルのエネルギー分解能としては、世界的にもこれまでの最高性能を達成している。この成果を、国際学会および論文にて、発表した。さらに、コンプトン望遠鏡の設計をすすめるため、モンテカルロシミュレータの開発を行ってきた。本年度は、このシミュレータを効率的に開発するためのソフトウェアの枠組みを完成させた。これを試作機の評価や次の試作の設計に使用している。 小型衛星に開発においては、次世代の衛星バスとして策定中のSpace Wireを実際に試作コンプトン望遠鏡のデータ収集に使用して、それを基にSpace Wireの仕様を検討する議論に参加してきた。また、本年度は、衛星機上でデータ処理を担当するSpace Wireを搭載した小型計算機"Space Cube"を実際に製作し、これを使ったデータ収集系の立ち上げを行い、地上実験、気球実験に使えるようにしている。
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