本研究では、MeVガンマ線観測を行う検出器として半導体コンプトン望遠鏡を開発するとともに、実際に観測を行うための小型衛星の開発を行っている。本年度は、コンプトン望遠鏡の開発と小型衛星の機上データ処理を担当するSpaceCube及びSpaceCube IIの開発を行ってきた。 コンプトン望遠鏡の開発では、本年度は特にCdTe半導体ピクセル検出器の部分を重点的に行った。我々はCdTe半導体検出器として、これまでも高性能のものを実現してきたが、コンプトン望遠鏡で使う場合、数百という単位で性能のそろったものが必要となる。そのような検出器を確実に実現するための選定方法を、本年度、100枚のCdTe半導体を評価して、確立することができた。半導体コンプトン望遠鏡のもう一つの構成要素である両面Siストリップ検出器に対しては、昨年度のものより、さらに大型化、多段化へ向けた開発を行った。検出器サイズとして、これまでの2.6cm角から、4cm角のものを実現させ、その性能を実証した。また、多段化へ向けては、不可欠な読み出し方法であるフローティング読み出しに目処をつけることに成功した。そして、これらの成果を国際学会等や論文で発表してきた。 小型衛星の開発に対しては、次世代の衛星バスとして開発中のSpaceWireとそのデータ処理部となる計算機"SpaceCube"の開発、実証を行ってきた。これらを用いて、観測機器をコンセントに差すような感じで、衛星内で動作し、小型衛星が実現できるような仕組みを目指している。本年度は、昨年度に開発したSpaceCubeをコンプトン望遠鏡の開発の過程で使用し、実証するとともに、SpaceWireを備えた様々な装置を開発した。また、小型衛星でのデータ処理部を担当し、実際の搭載も念頭にしたSapceCube IIの開発を行い、最初の試作が完成した。
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