研究課題
研究代表者は以前の研究で、歩行運動様リズムを形成する脊髄内神経回路網に関して、GABAおよびグリシンを介した興奮性のシナプス入力がその発達期に一過性に見られることを示した。このような胎生期の脊髄におけるGABAおよびグリシンの興奮性は、細胞内Clイオンを細胞外に汲み出すK^+-Cl^- cotransporter isoform 2 (KCC2)の発現が発生初期の細胞では少ないために起こることが知られている。本研究では、発達期のGABAおよびグリシンによる興奮性を抑え、神経回路の形成におけるこれら興奮性応答の役割を明らかにすることを目的に、分子生物学的手法を用いて脊髄内ニューロンにおけるKCC2の発現レベルを変更し、発達期の神経ニューロンにおける影響を調べた。歩行運動の神経回路網が形成される時期のマウス胎児の脊髄中心管に、KCC2遺伝子を組み込んだGFP発現プラスミドベクターを子宮外から微少ガラス管を用いて注入し、エレクトロポレーションによって、分裂過程にある脊髄ニューロンにKCC2遺伝子を導入した。遺伝子導入の2日後に脊髄を摘出し、免疫染色を行ったところ、GFPを発現している細胞でKCC2の発現も同時に見られた。さらに、このようにKCC2を強制発現させたニューロンにおいて、グラミシジン穿孔パッチクランプレコーディングを行ったところ、KCC2を強制発現させたニューロンでは、GFPのみを発現させたニューロンに比べて、GABA投与時の反転電位が30mV過分極側にシフトしていた。これらのKCC2を強制的に発現させたニューロンとGFPのみを発現させたニューロンについて、細胞体の大きさ、細胞体から出ている神経突起の数および長さを比較したところ、いずれの値にも有意な差は見られなかった。そこで、脊髄ニューロンの中でも限局した細胞にのみKCC2を発現させることでより詳細な比較をするために、運動ニューロン特異的な転写因子であるHb9の下流にKCC2を醜置するプラスミドの作成を行った。
すべて 2005
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Neuroscience Reserch (Supplement) 29
ページ: S177
The Journal of Cell Biology 169
ページ: 527-538