研究課題
アメリカ合衆国シカゴ大学の人類学者、ソル・タックスおよびロバート・レッドフィールドを筆頭とするチームが、1930年代頃、中米グァテマラ山岳地帯に暮らすマヤ系先住民族の村落を調査した。これは、米国現代人類学史上おそらく初めての参与観察法による重点地域研究であった。ここで収集されたデータおよびこれらデータから作り上げられた論理は、その後の開発経済学や新従属論などに多大な影響を及ぼすこととなる。中田はとりわけ、このチームによる中西部アティトラン湖湖畔村落の調査に注目、村での老人からの聞き取りや、国立公文書館での歴史資料の収集、そしてとりわけシカゴ大学スペシャル・コレクションに所蔵されている調査時に交わされた膨大な往復書簡の閲覧などからこの調査をトレースし、この調査がどのように行われ、どのようなプロセスを経て後年に影響を及ぼす諸理論となったのかを研究した。具体的には、現地調査が成立するための必要条件として、彼らが現地エリートを調査媒介者として利用したことに注目した。ちなみに現時点では立証までには至っていないが、この際の媒介者が、後年のグァテマラにおける先住民研究の「ひな形」となり、後年のグァテマラ内戦においては、政府・国軍の反乱鎮圧のマニュアル作成および、左翼ゲリラ側の大義名分の下絵となったと考えられる。以上獲得された知見は、日本語で近々に公刊される(人文書院)とともに、グァテマラ現地でのスペイン語での単著として発表する(AVANCSO:グァテマラ社会科学振興協会)ことになっている。
すべて 2006
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proceeding paper, presented at the Kyoto Symposium, Crossing Disciplinary Boundaries and Re-visioning Area Studies : Perspective from Asia and Africa in the Kyoto University
ページ: 375-384