酸化物半導体ZnOはワイドギャップ半導体として、紫外領域の光デバイスとしての応用が期待されている。特に、安価で、高効率の発光デバイスとしての応用は、照明用光源としての波及効果は非常に大きい。ところが、他のワイドギャップ半導体と同様に導電性制御が非常に困難でり、p型のZnOを得る手法が確立されていないp型のZnOを得るためには、高品質なアンドープのZnOを得ることが必要である。通常ZnOはサファイア上に成長を行うが、直接成長を行うと、質の悪いZnOしか得られない。そこで、ZnOを成長する前に様々な、層を挿入するが我々は、簡便な低温バッファ層の導入を行ってきた。この層により上部のZnOの結晶学的、電気、光学的に特性は改善されたが、更なる特性改善には、特に電気特性の改善には低温バッファ層の改善が必要であることがわかった。低温バッファ層は、その名の通り低温で堆積するため、非常にフラットな表面を有するが、ZnO層間の結晶配列の乱れにより、電気的に縮退した半導体の特性を示すことがわかった。この縮退した半導体性質のため層全体の電気特性の向上が進まなかった。そこで、この縮退した層の改善策として、窒素をドーピングすることにより縮退をとくことに成功した。その結果、層全体でのキャリア濃度の低下、および高移動度のZnOを得ることが出来た。また、室温では、処理の前後で電気特性はそれほど大きな違いはないが、低温では非常に大きな効果として現れ、低温バッファ層の電気的なコントロールが非常に重要な技術であることを明らかにした。
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