1.ラット口腔領域における副交感神経反射性血管拡張反応に対する各種麻酔薬の影響の評価 γ-aminobutyric acid(GABA)を介して麻酔効果を発揮すると考えられている吸入麻酔薬が口腔顔面領域における体性-副交感神経反射性血管拡張反応、及び非反射性血管拡張反応に及ぼす抑制作用を吸入麻酔薬(イソフルラン)を用いて検討した。その結果、反射性及び非反射性血管拡張反応ともイソフルランにより抑制を受けた。しかしα_1受容体作動薬メソキサミンを持続投与した場合、非反射性血管拡張反応はイソフルランによる抑制を受けなかったのに対し、反射性血管拡張反応はメソキサミン投与の有無にかかわらず、イソフルランによる抑制を受けた。以上よりイソフルランがもたらす非反射性血管拡張反応の抑制は、末梢血管のトーンの低下によるものであるのに対し、反射性血管拡張反応の抑制は反射中枢の抑制によるものであることが示された。 2.ラット口腔領域における副交感神経反射性血管拡張反応の中枢機序の検討 本反射は口腔顔面領域からの感覚性一次性ニューロンが三叉神経脊髄路核で中継された後、副交感神経核である上唾液核・下唾液核に興奮を伝え、口腔顔面領域(口唇・口蓋・咬筋)の血管拡張反応を副交感神経反射性に起こす。しかし、顎下腺における反応は、口唇・口蓋・咬筋におけるものと異なり、三叉神経脊髄路核の関与は少ないことが明らかとなった。これについては弧束核の関与が示唆されるが、現在検討中である。 3.副交感神経反射性血管拡張反応の反射中枢におけるGABAの影響の評価 選択的GABA_A受容体アンタゴニストであるビククリンを反射中枢(三叉神経脊髄路核・唾液核)に微量注入した場合、口唇に長時間作動性の血管拡張反応が生じた。これは反射中枢においてGABAが神経伝達物質の1つとして作用していることを示唆している。
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