研究概要 |
多くのERP導入プロジェクトが計画通りに完了していない原因の1つにERP導入方法論に関する課題がある。これは,既存のERP導入方法論にユーザ視点が欠如していること,および各パートナーの導入方法論間に継ぎ目が存在していることに起因している。したがって,ERP導入プロジェクトの主体となるユーザ企業がERP導入プロジェクト参加企業間で役割分担を明確化にし,導入目的や目標を具体化・共有化するために,(1)ユーザ視点による,(2)シームレスなERP導入方法論が必要である。このような方法論を『ユーザ視点の包括的ERP導入方法論』と定義し,ユーザ主導の包括的ERP導入プロジェクト・フレームワークを提案している。 このフレームワークは各パートナー企業の導入方法論の特徴,および既存の導入方法論に関する議論から,『導入前段階』,『導入段階』,『導入後段階』の3つの段階(ステージ)を設定している。また,ERP導入プロジェクトを成果物によって細分化・詳細化し,各成果物を生成するためにステージで必要となる作業をフェーズ,アクティビティ,ワーク,タスクの階層構造(WBS)によって詳述している。このERP導入方法論は,(1)技術者指向ではなく,管理者指向であること,(2)開発ライフサイクルではなく,導入ライフサイクルであること,(3)開発プロセスではなく,マネジメント・プロセスであること,の3つの特徴を有している。 今日のERP導入プロジェクトを巡る議論には,導入方法論と成功要因・失敗要因を関連づけた研究は少ない。また,成功要因・失敗要因はプロジェクトでの作業・活動とともに存在し,どの要因がどの作業でプロジェクトの成否に影響を与えているのかを分析することがより重要である。今期の研究は,成功要因・失敗要因分析を行うための基盤研究である。
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