研究概要 |
KamLANDでは、平均距離、約180kmの原子炉より飛来する反ニュートリノの振動の研究を行っている。検出器は、1,000トンの液体シンチレータ、バッファーオイル、水チェレンコフカウンターなどから構成されており、バックグラウンドを低減するための工夫がなされている。 放射線源やミューオンによる原子核破砕のイベントを用いて、0.5〜14MeVでのエネルギーの校正を行っている。エネルギーの絶対値に対するエラーの他に、液体シンチレータのクエンチ(消光)やチェレンコフ光の寄与なども考慮すると、2.6MeVにおける全エラーは2.0%以内に抑えられることが分かった。エネルギー分解能は、これまでの1325本の17インチのPMT(光電子増倍管)に554本の20インチのPMTが2003年2月27日に新たに加わったことにより、エネルギー1MeVのイベントにおいて7.3%から6.2%に向上した。 2002年3月9日から2004年1月11日までのデータ(515.1日)を用いて解析を行う。バックグラウンドイベントは、偶発イベント、^8He/^9Li、高速中性子、^<13>C(α,n)^<16>Oなどを合わせると17.8±7.3となった。ニュートリノ振動がない場合の期待される原子炉ニュートリノイベントは、先発信号のエネルギー閾値2.6MeVにおいて365.2±23.7(syst)であるに対し、観測されたのは258イベントであった。このことから、ニュートリノの平均生存確率は0.658となり、99.998%の信頼度でニュートリノの消失が確認された。 ニュートリノ振動がない仮説に対する検定は、スペクトルの情報のみを用いても行うことができる。イベント数のスケールをフリーにしたニュートリノスペクトルの歪みに対するχ2乗検定によって、振動のないスペクトルは99.78%の信頼度で排除された。
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