研究概要 |
・独自に考案したプロセス技術を用いて強磁性単一電子素子を作製した. 強磁性層/絶縁層/強磁性層で構成されるTMR接合膜をSi基板上に積層させ,この多層膜を電子線リソグラフィとArミリングにより二つの電極の形に微細加工した.その後,電極間に配置した金属細線をマスクとして,ArミリングによりTMR接合膜に転写することで,最小で幅20nm,長さ500nmという極めて小さなTMR接合を有する強磁性単一電子素子を作製することに成功した.この結果,従来は困難であった様々な構成のTMR接合膜(例としてMgO絶縁層を用いた高磁気抵抗変化率を示すTMR接合)を強磁性単一電子素子に加工することが可能になった. ・微小トンネル磁気抵抗素子評価装置を用い,作製した強磁性単一電子素子の諸特性を評価した. 波形発生器,ロックインアンプ,低ノイズ電流プリアンプを組み合わせることで,高抵抗試料用の評価装置を構築した.さらに,この測定系と低温物性測定装置を用いて強磁性単一電子素子の抵抗値の磁場依存性,および電流電圧特性を測定した.この結果,測定温度450mKにおいて単一電子トンネルに起因する非線形な電流電圧特性が観測された. ・強磁性単一電子素子にゲート構造を付与し,「強磁性単一電子トランジスタ」を作製した. 前述の微細加工プロセスを応用して,強磁性単一電子素子の中間電極近傍にゲート電極を設けた「強磁性単一電子トランジスタ」を作製した.また多数の試料の効率的な作製が行えるように作製プロセスを最適化し,単位基板あたりの試料数を従来の三倍に増やすことに成功した.さらに単一電子トンネルをより明瞭に観測するために必須のマイクロ波フィルタを微細加工にて作製し,極低温試料ホルダーに組み込んだ.
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