本年度の研究成果は次の3点である。 (1)GaNAs(001)成長表面の理論検討 昨年までに得られていたGaNAs(001)成長表面の反射率差分光法による測定結果を基に、千葉大学理学部中山隆史教授との共同研究としてGaNAs(001)成長表面の理論検討を行った。本研究ではその表面構造としてバックリングしたN-Asダイマーを持つ(2x4)表面構造モデルを提案し、その構造がエネルギー的に安定であることを理論計算によって示した。 (2)GaNAs薄膜の窒素原子周辺のXANES測定 高エネルギー加速器研究機構において、GaNAs薄膜のXANES測定を行った。本研究ではGaAs(001)およびGaAs(111)A基板上に作製した薄膜について測定を行い、その両者では窒素原子周辺の局所構造が異なっていることを明らかにした。 (3)GaInNAs薄膜のインジウム原子周辺のEXAFS測定 大型放射光施設SPring-8において、GaInNAs薄膜のEXAFS測定を行った。本研究ではIn濃度に依存した測定結果の変化を観測した。GaInNAsのIn K吸収端EXAFS測定からはIn-As結合の長距離化が見られ、In-As結合の長距離化はIn-Nペアの形成に伴う現象であることを明らかにした。また、In-Nペアの形成に伴い第2近接原子間距離も長距離化した。これはIn-As-Inの組み合わせが増えるためであることを明らかにした。 以上3点の知見はIII-N-As族化合物半導体に新たな知見を与えるものである。特に第1点目の表面構造モデルは世界的にも例を見ないものであり、特筆すべき成果であると考える。
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