研究概要 |
補助人工心筋への応用を目的として熱電素子と形状記憶合金を組み合わせたアクチュエータである熱電運動素子の製作とその動作性能評価を行った。熱電運動素子は、形状記憶合金が有する形状記憶効果による変形ひずみの温度依存性を熱電素子が有するペルチェ加熱とペルチェ冷却により誘起するという原理で動作する。また、熱電運動素子の動作性能は周囲環境への伝熱状態で左右される。 これまでの研究成果として、熱電運動素子では形状記憶合金のロッドを用いた構造において無負荷下で1Hzの連続動作を達成している。そこでさらに、従来のTi-Ni系形状記憶合金よりも出力応力、ひずみ変形量および耐久性において優れた性能を有する形状記憶合金(Ti-Ni-Cu)のワイヤ(BMF,トキコーポレーション)を利用して、熱電運動素子のひずみ変形量の増加と動作速度の向上を図った。また、構造をより柔軟なものとするため、Ω型の電極を用いた。両部品の組み合わせにより、これまで実現できなかった、はんだ接合を用いながらも柔軟に動作する熱電半導体の電気回路をアクチュエータの内部に製作することに成功した。有負荷下における動作性能試験を行うために試験装置の製作を行った。この試験装置では、一定温度に保持した水の中で一定荷重を負荷した熱電運動素子の動作性能を評価することが可能である。これにより、人体内部での伝熱環境を模擬し、熱電運動素子が行う仕事の効率とひずみ量の評価を行った。試験の結果、これまで不可能であった有負荷下における1Hz動作を確認することができた。また過去に製作した熱電運動素子と比較して、7倍のひずみ変形量の増加を確認した。投入電力に対する仕事の効率においてはペルチェ加熱を用いた熱電運動素子と通電加熱を用いた熱電運動素子の比較を行い、2倍以上高効率な仕事を行うことが可能であることを確認した。
|