研究概要 |
前年度、研究において開発した熱電素子を用いた運動素子は高い仕事効率や、1Hz以上での反復動作を行うことが可能であるという長所を有する。この特徴を生かし、補助人工心筋への適応をめざして研究を行っている。本年度においては、実際の適応を想定した場合に、構造の単純さや頑強さは素子そのものの信頼性を高めるという考え方のもと、新構造を有する運動素子の提案、試作ならびにその基本的力学的性能について測定ならびに評価を行った。 新構造は、形状記憶合金(Shape Memory Alloy, SMA)のワイヤー数本をベースとなる母材に張ったパッチ型のアクチュエータである。このアクチュエータの動作は、SMAのワイヤーに電流を流すことで屈曲し、また自然冷却によりSMAを冷却し伸張する。心臓に張り付けたアクチュエータの屈曲伸張動作を心周期にあわせ、心臓マッサージの要領で弱った心臓の補助するという使用方法を想定している。 人体への熱負荷低減を考慮した断熱材でSMAワイヤーを覆った単純構造を有するアクチュエータでは0.5Hzの動作速度を実現し、昨年度製作したアクチュエータの5倍高い仕事効率で動作することが確認した。 また、変位の増加を目的としてバネ板にSMAワイヤーを張り付け屈曲伸張動作するアクチュエータの開発も行った。このアクチュエータでは最大変形力700gf、最大変位20mmを確認している。さらに改善の余地があり、より大きな変位の発生が期待できることが分かっている。 このアクチュエータについてその性能を評価するため山羊を用いた動物実験を行い、アクチュエータが発生する動作を心室もしくは心房の動作に伝達し、効率良く血液を駆出するため、アクチュエータの装着方法について検討する必要があることを確認した。
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