研究概要 |
ウシおよびブタの卵巣内に数多く存在している卵母細胞を有効利用するために,未成熟卵母細胞の凍結保存法の改良,および凍結障害を受けた卵母細胞の救助法の開発を行った。凍結法には短時間で簡便に処理できるガラス化法を用いた。ガラス化法では,細胞毒性のある高濃度の凍結保護物質に暴露することが必要で,その毒性や浸透圧の影響を軽減することがその後の生存に重要である。その方法として,低濃度の凍結保護物質から徐々に高濃度のものに暴露する方法を用い,ウシ凍結卵母細胞由来の個体作出に成功した。その成果を,第97回日本繁殖生物学会において口頭発表するとともに,原著論文としてまとめ,Biology of Reproductionに投稿したところ,受理され印刷中である。ブタのガラス化保存においては,卵細胞質内に多く含まれる脂質粒が主要な凍結障害の要因である。その脂質粒をガラス化前に除去することが,保存後の生存性の向上につながる。しかし,マイクロマニュピレーターを用いて脂質粒を除去する際に卵母細胞が損傷する可能性が高い。そこで,糖を添加した溶液中で卵母細胞を遠心することで脂質粒を卵母細胞から分離し,その除去を簡便にする方法を開発した。その成果を原著論文としてまとめ,Cryobiologyに投稿したところ,受理され印刷中である。また,凍結障害を受けた卵母細胞の救助法として,凍結後の卵母細胞の核をマイクロマニュピレーターで取り出し,未凍結の卵母細胞へ注入する卵核胞置換法を行った。また,凍結障害を回避するために,卵核胞置換技術を用い,卵母細胞から取り出した核のみを凍結する方法を開発した。その成果を,第46回哺乳動物卵子学会で発表予定である。
|