企業等では、環境保全に対する取り組みを環境会計を用いて定量的に把握し、その結果を経営に活かしている。一方、農業経営体では環境保全活動を行っていても、環境会計等を用いてその取り組みを定量化している例はほとんどない。農業の持つ環境便益が議論されるにいたり、環境保全型農業に対する税制上の優遇措置や、その取り組みに対する直接支払いなどが議論されている。こうした状況のもと農業経営体は環境に対する便益を定量化し、行政や納税者である国民に対してアカウンタビリティを果たしていかなければならない。また、環境保全型農業で栽培された農産物に関心の高い消費者に対しても、農業における環境保全に関する取り組みを公表していくことは重要である。このため、企業が用いる環境会計は農業においても有効であると考える。 本年度は環境保全型農業のうち、減農薬・減化学肥料を行う農業経営体の環境会計を、宮城県が示す慣行農法と比較しながら算定した。算定に際し、農薬や化学肥料をどのような数値で表すかは、農業におけるライフサイクルアセスメントに関する研究が参考になった。この結果は、学会で報告を行った。 また、企業はステークホルダーの情報ニーズに応えるために環境会計に取り組むという側面に着目し、農業経営体が環境会計に取り組むにはステークホルダーの強い関心が契機となると考えた。そこで、農業経営体のステークホルダーの環境問題における関心について考察した。ステークホルダーのうち消費者と食品メーカーにおいては、ある程度関心が高いことが分かった。この結果については、学会で報告を行った。 さらに本年度は、OECDを訪問し、ヨーロッパ各国の農業に対する環境保全型農業への直接支払いの状況を調査した。
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