研究概要 |
企業等では,環境保全に対する取り組みを環境会計を用いて定量的に把握し経営に活かしている。一方,農業経営体では環境保全型農業への取り組みが進展しているにもかかわらず,環境会計等を用いてその取り組みを定量化しているところはほとんどない。 そこで本研究では,農業経営体における環境会計を確立するために,以下の手順で研究を行う。 1.企業の環境会計の取り組みと利用状況に関する分析 2.農業経営体への環境会計の適用 3.農業経営体への環境会計の導入とその情報の公表 本年度は,上記研究の目的において掲げた3.農業経営体への環境会計の導入とその情報の公表を行った。 第一に,農業環境会計モデルの構築を行った。具体的には,2004年度および2005年度の研究成果から得られた慣行農法を基準にする方法を採用し,実際に地域全体で環境保全型農業を行う地区の農業経営体の取り組みを調査することでモデルの構築を行った。 第二に,農業環境会計モデルを利用し,環境保全型農業の取り組みの分析を行った。この結果,農薬および化学肥料をまったく使用しない農法よりも,除草剤を使用し,化学肥料を慣行農法の半分使用する農法の方が経営と環境のバランスが取れている農法であるという結論が得られた。 第三に,農業環境会計モデルおよび算定結果を農業におけるステークホルダーに公表し,農業環境会計の評価を行った。その結果,農業環境会計の概念および慣行農法を基準にする方法については支持が得られたが,環境に関する項目については今後も議論が必要となった。また,環境会計で示される定量的な情報とともに,写真や文字を用いて表される定性的な情報もあわせて伝達していく必要があることも示された。
|