私は、余剰次元を用いて超対称性の破れの機構を説明することを研究の目的としている。超対称性の破れの機構を説明する素粒子模型の構築を念頭において、超重力理論におけるアノマリーの研究を行った。超重力理論におけるアノマリーの研究は、理論的整合性の観点からだけでなく、アノマリーメディエーション機構などの、現象論への応用の観点から見ても重要である。具体的に行った研究は以下の通りである。 現象論で用いられるEinsteinフレームの超重力理論は、一見、超重力変換にアノマリーが伴い理論的整合性に欠くように見える。しかし、この超重力変換に伴うアノマリーは、SUGRAフレームからEinsteinフレームに移る際に生じるヤコビアンの超重力変換の変化分とキャンセルすることを確かめた。すなわち、超重力理論はEinsteinフレームにおいても理論的整合性が保たれていることを見た。実際この結果は、ゲージアノマリーについては他の研究者たちにより確かめられていたので、我々は重力アノマリーのケースについての確認を行った。 また、超重力理論にはスーパーワイルケーラーアノマリーが存在することが知られているが、現在までになされている計算では項が足りないことを見つけた。したがって我々はスーパーワイルケーラーアノマリーの完全な構造を理解するために、足りない項の計算を行った。コンポーネントレベルでの計算は終わっており、現在はこの結果をスーパーフィールドを用いて、マニフェストに超対称な形に書くための計算を行っている。
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