研究概要 |
光学活性ヘリセン1,12-ジメチルベンゾ[c]フェナントレンの5,8-位とm-フェニレンをアセチレン結合で連結したオリゴマーは非平面π-π相互作用による興味深い会合挙動を示す。鎖状オリゴマーは溶液中でラセン構造とランダムコイル構造の平衡状態にあり、環状三量体である[3+3]シクロアルキンは強く選択的に二分子間会合する。今回、非平面π-π相互作用の性質を明らかにするために以下の実験を行った。 鎖状七量体のラセン構造からランダムコイル構造変化における芳香族溶媒効果を速度論的に解析した。CDを用いてCotton効果の経時変化から25℃における速度定数kを算出した結果、構造変化が最も速いヨードベンゼン中ではk=28min^<-1>、最も遅いトリフルオロメチルベンゼン中はk<10^<-6>min^<-1>であり、両溶媒間でkに10^7以上の差があることを明らかにした。芳香族置換基のみによるこのような大きな溶媒効果は例がない。また、Log k値は芳香族溶媒のハード値ηと良好な負の相関を示し、π-π相互作用がHSAB則と関連するという興味深い知見を得た。 [3+3]シクロアルキンのヘリセン部に様々な置換基(-OSiMe_2t-Bu,-OH,-OAc,-OTf,-ONf)を導入した五種の[3+3]シクロアルキン誘導体を合成し、非平面π-π相互作用における置換基効果を系統的に調べた。^1H NMR、CDおよび蒸気圧オスモメトリー法を用いて会合の強さを比較した結果、クロロホルム中では-H>-ONf>-OTf>-OAc>-OSiMe_2t-Bu、テトラヒドロフラン中では-OTf>-ONf>-OAc>-H>-OSiMe_2t-Bu>-OHの順であり、電子求引性基が非平面π-π相互作用を強化することがわかった。
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