研究概要 |
本研究では、鞭毛運動の制御に不可欠である、ラジアルスポークという蛋白質複合体に注目し、その解析を行っている。真核生物が広く有する鞭毛・繊毛は、細胞自体の持つ微小運動器官であり、細胞遊泳や溶液の循環など、その機能は様々な生体にとって非常に重要である。鞭毛・繊毛の内部の骨格上に存在するモーター蛋白質、ダイニンは滑り運動を発生させるが、一見放射相称に存在するダイニンが、効率的な一平面上での鞭毛運動を起こす制御機構は不明である。ラジアルスポークはその制御の中枢を担う蛋白質複合体であると考えられ、複合体の異常は生体の生命活動にとって致命的である。 遺伝子情報が非常に潤沢で、均一な試料を多数調製できるうえに、運動制御の可視化が容易であることから、原索動物カタユウレイボヤの精子を研究に用いる。これまでに、精子形成の場である精巣における発現遺伝子のプロファイルを作成し、その情報をもとに、質量分析に基づいたホヤ精子プロテオミクスの分析系を立ち上げた(Inaba et al.,2002. Hozumi et al.,2004)。既知の成分の情報をもとに、ホヤ精子中からラジアルスポーク成分を精製し、新規の蛋白質成分を多数同定することに成功している(Padma, Satouh(*equal first)et al.,2003. Satouh et al.,2005)。また、その中で、既知成分と性質の異なる蛋白質、NDK/DPY26やCMUB116などに特に注目し、詳細な機能解析を行っている。さらに、精巣だけでなく、ゲノム全体の情報とcDNA情報を用いた、新しい高水準ホヤ総合プロテオミクス分析系の構築に取りかかり、その基盤を構築することに成功している。
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