ALS2タンパク質機能解析を目的として、ALS2モデル動物(Als2ノックアウトマウス)から初代培養繊維芽細胞および初代培養神経細胞を樹立し、同腹の野生型マウスから樹立したそれぞれの細胞との細胞表現系を比較した。これまでに、Als2欠損によって、初代培養神経細胞の軸索伸長が遅延することが明らかとなっている。ALS2は膜輸送の初期過程を担うRab5の活性化因子であるため、Als2欠損神経細胞では、ALS2の機能喪失によって、細胞内膜輸送・物質輸送機能の異常が生じ、軸索伸長に影響を与えたものと考えられた。初代培養海馬神経細胞におけるALS2の細胞内局在を解析した結果、ALS2は神経成長円錐において、アクチン繊維に囲まれた大型のエンドソーム、マクロピノソームに局在することが明らかとなった。マクロピノソームは、マクロピノサイトーシスによって生じるエンドソームの一種である。そこで、ALS2がマクロピノサイトーシスに関与するもと考えられたため、Als2欠損マウスと同腹野生型マウス由来の初代培養大脳皮質神経細胞を用いて、HRPの取り込み量を比較した。HRPは細胞外液と共に非特異的に細胞内へ取り込まれるエンドサイトーシスマーカーであり、主にマクロピノサイトーシスよって細胞内に取り込まれる。また、マクロピノサイトーシスは、Rab5の活性化を必要とすることが知られている。その結果、Als2欠損初代培養大脳皮質神経細胞は、同腹野生型初代培養大脳皮質神経細胞と比較して、HRPの単位時間当たりの取り込み量(マクロピノサイトーシス活性)が有意に減少していることが明らかとなった。一方で、初代培養繊維芽細胞を用いて同様の実験を行ったところ、遺伝子型に対応したHRPの取り込み量の違いは見出せなかった。よって、ALS2は、神経細胞においてマクロピノサイトーシスを調節することが明らかとなった。
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