研究概要 |
イネは典型的なケイ酸集積植物として知られているが、その集積機構についてはまだ明らかにされていない。本研究では根によるケイ酸の吸収に関与する遺伝子を同定するためにすでに単離したケイ酸吸収欠損変異体(lsi1)を用いて、ポジショナルクローニングを行った。変異体とインド型イネ品種カサラスとの交配で得たF_2集団を用いて、SSRマーカーやCAPSマーカーで遺伝子型を調べた結果、原因遺伝子は2番染色体に座乗していることが明らかとなった。野生型と変異体の塩基配列を比較した結果、変異は一塩基置換に起因することがわかった。この遺伝子は3609bp塩基で、298個のアミノ酸からなっている。またこの遺伝子は膜タンパク質をコードすると予測され、ケイ酸吸収に大きく関与していると考えられる。 また新たなケイ酸吸収欠損突然変異体の選抜を試みた。メチルニトロソウレアで変異処理した台中65のM_3種子を用いて、ケイ素の同属元素であるゲルマニウムに対する耐性を指標し、変異体の選抜を行った結果、ゲルマニウムに対して、強い耐性を示す変異体(lsi2)を得た。この変異体によるケイ酸吸収特性を野生型(WT,台中65)と比較して調べた。短期(12時間まで)及び長期(50日間)のケイ酸吸収実験では、変異体によるケイ酸の吸収は、WTよりはるかに低かったが、他の養分(KとP)の吸収においては差が認められなかった。また根の先端(0-1.5cm)のシンプラスト液中のケイ酸濃度を比較した結果、変異体と野生型との間に差が認められなかった。しかし、導管液中のケイ酸濃度は野生型のほうが変異体よりはるかに高かった。これらのことは、変異体lsi2はケイ酸の導管へのローディング過程が破壊されていることを示している。
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