研究課題
一般に、花粉媒介者を誘引する器官(花弁や花冠)は、他家受粉型の植物よりも自家受粉型の植物で小さい。この現象は、花の各器官への資源配分(=性配分)を扱うモデルによって説明されてきた。しかし、過去の研究は資源配分の階層性を考慮しておらず、同一種内で行われた検証例も非常に少ない。本研究では、3次の階層的資源配分を仮定し、交配様式の異なるオオバナノエンレイソウ集団を用いた検証を行った。花弁の大きさは、自家受粉型(6.91cm^2)よりも他家受粉型(10.38cm^2)の集団で大きかったが、この大きさの差は既存の理論だけでは説明できなかった。他家受粉型の植物では、花内で多くの資源が花弁に配分されているだけでなく、花数が少なく、一花あたりの資源投資量が大きかった。この結果は、自家受粉の進化にともなう性配分パタンの進化が複数の階層で生じることを示唆する。本研究の結果は、American Journal of Botanyにおいて誌上発表された。また、生育場所の分断化が植物個体群に与える影響に関して文献調査を行った。生育場所の分断化は、生物多様性に対する最も大きな脅威の一つである。残存する植物個体群に与える影響について検証した過去約15年にわたる研究は、分断化が花粉制限による種子生産量の減少をもたらすこと、エッジ効果による環境条件の改変が、新しい個体の加入をはじめとする多くの適応度成分に影響を与えることを示した。また、分断化は遺伝的多様性の減少や、しばしば近親交配を伴う。これらは主に、幼植物の加入や制限を制限すると考えられるが、分断化が個体群の長期的存続に与える影響は、特に世代時間の長い植物で不明瞭である。このレビューは、保全生態学研究において誌上発表された。
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American Journal of Botany 93,1
ページ: 134-141
保全生態学研究 10,2
ページ: 163-171