研究概要 |
心肥大・心不全発症時の心筋細胞は、細胞内の様々なシグナル伝達経路が活性化された状況にある。トランスジェニックマウスを利用した分子生物学的研究から、病態発症時の心筋細胞リモデリングには、Ca^<2+>依存性脱リン酸化酵素・カルシニューリンが大きくかかわっていることが明らかとなってきた(Molkentin JD,1998,Cell)。カルシニューリン活性は、細胞内Ca^<2+>濃度に左右されるため、心肥大・心不全発症時におけるCa^<2+>ハンドリングの分子機構を明らかにし、Ca^<2+>輸送体そのものをターゲットとした「Ca^<2+>ハンドリング是正治療」を目指すことは大変意義深いことである。本研究では、心筋細胞リモデリングをひきおこすCa^<2+>濃度をコントロールするCa^<2+>輸送体を新規心不全治療ターゲット分子として確立し、より効果的な心不全治療薬を開発することを目的としている。 心筋細胞内Ca^<2+>ハンドリング異常は病態発症には深刻であるが、これまでの研究から、「単に筋小胞体Ca^<2+>ストア機能を亢進させて、細胞内のCa^<2+>オーバーロードを回避するだけでは病態を改善できない」例が複数報告されてきた。本年度は、細胞外への唯一のCa^<2+>排出系であるNa^+/Ca^<2+>交換体活性が著しく低下することが、心臓に直接的な機械負荷を与えるトリガーとなる血行動態の変動パターンに応じて大きく変化することを発見し、その後の心筋細胞リモデリングに大きな影響を与えることを示した(Katanosaka Y. et al. 2007,Annu.N.Y.Acad.Sci.)。
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