地球型惑星は原始太陽系星雲ガス(ネビュラガス)の中で形成した可能性が高いことが惑星形成理論および観測からわかっている。微惑星の衝突合体によって惑星が現在の月サイズよりも大きくなると、周囲のネビュラガスを重力的に捕獲し始める。また、微惑星に含まれている揮発性成分が脱ガスするのも惑星が月サイズ以上になってからである。脱ガスは地表面付近で起こるため、大気の混合を考慮しなければ、脱ガス成分の大気を下層、ネビュラガス成分の大気を上層とした2層大気が惑星の初期には形成されたはずである。原始太陽系星雲ガスが散逸するときに、上層のネビュラガス成分の待機は散逸し、下層の脱ガス成分の大気が生き残ることが定性的にわかるが、2層の混合によってネビュラガス成分が生き残ってしまう可能性もある。 まず、2層大気の熱構造を数値的に解くプログラムを作成し、対流が起こっている場所を調べた。その結果、惑星が火星サイズの場合、対流は地表面付近で起こっており、その領域は薄く、脱ガス大気とネビュラガス大気の混合があまり起こらないことがわかった。一方、惑星が地球サイズ程に成長すると、対流層が厚くなり、必然的に2層の混合が起こることがわかった。これは、惑星サイズが大きくなるほど、大気が分厚くなり、放射で熱を捨てにくくなることが原因である。以上の結果は原始太陽系星雲ガスの物理条件にはほとんど依存しないこともわかった。 ネビュラガスには、大量の希ガスが含まれており、量的にも同位体組成的にも、現在の地球大気のものと異なっている。そのため、地球サイズの惑星では、混合によって混ざってしまったネビュラガス成分が、何らかのメカニズムで失われる必要があることがわかった。大気散逸メカニズムとして有力なのは、太陽UVによる大気の散逸、および太陽風による大気の剥ぎ取りなどが考えられる。
|