研究課題
ゲージHiggs系には様々なソリトンが存在する。それらは表に示したように、そのソリトンのコディメンジョンによって対応するホモトピー群で特徴づけられる。これらはBPSであるために、ソリトン間に力が働かないという著しい特徴がある。そのためそれら解の空間はモジュライ空間をなし、物理学的にも数学的にも興味深い対象である。最も有名なモジュライ空間の構成はインスタントンに対するAtiyah-Drinfeld-Hitchin-Manin(ADHM)構成法であろう。これは直ちにNahmによってモノポール構成法に改良された。ソリトンのモジュライ空間の歴史はその後長い空白がある。ボーテックスに対してはインデックス定理や少数散乱の問題など様々なアプローチがあったが、去年になってやっと、そのモジュライ空間がHanany-Tongによって構成された。ところが、ドメインウォールのモジュライ空間に至ってはごく少数の研究を除いて皆無であった。私は東工大の3人の共同研究者と共に、ドメインウォールのモジュライ空間を遂にシステマチックに構成することに成功した。この論文は非Abelianドメインウォールの解を構成しているということでも画期的である。非Abelianなソリトンとしては、ウォール以外は今まで知られている。しかし、ウォールに関しては定性的な議論しか存在せず、我々の論文が最初である。具体的には4次元N=2の超対称なU(N_C)QCDで、質量をもった基本表現のハイパー多重項がN_F個ある系を考える。この系は、質量がすべてゼロだと真空はHiggsブランチをもち、それはグラスマン多様体の余接バンドルT^*[SU(N_F)/SU(N_C) x SU(N_F-N_C) x U(1)]である。質量のある場合の真空の構造は調べた。Higgsブランチのほとんどの点は持ち上がり、離散的ないくつかの点のみが真空として残る。よってこれらを結ぶドメインウォールが存在する。ゲージカップリング無限大の場合を考えるとこの系は非線形シグマ模型に落ちる。最も簡単なN_F=2,N_C=1のドメインウォール解は構成していた。一般の場合の一般解は、本論文で構成した。さらにモジュライ空間はグラスマン多様体SU(N_F)/[SU(N_C) x SU(N_F-N_C) x U(1)]であるということが判明した。これは、もとのゼロ質量のHiggsブランチの空間の特殊Lagrangian部分多様体である。面白いのは、このモジュライ空間はすべてのトポロジカルセクターを足したものであり、他のソリトンであれば無限次元なものである。
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