研究課題
Alzheimer病の発症機構として、β-amyloid(Aβ)が膜成分糖脂質であるGM1ガングリオシドと相互作用し、沈着・凝集を引き起こしている可能性が指摘されている。そこで本研究では、NMR法を用い、GM1ガングリオシドとAβの相互作用および凝集構造を解析することを目的とした。本年度は、昨年度から行っている、疑似膜中におけるAβペプチドの挙動解析に加え、今年度からAβ線維化前の中間構造についての解析に着手し、また、局所的な構造分布について検討および、解析手法の確立を試みた。詳細を以下に示す。Aβ線維化前の中間構造においては、局所的に^<15>Nラベルを施したAβペプチドを8種類合成し、各ペプチドの^<15>N CP/MAS NMRスペクトルを測定した。この結果、構造に分布は存在するものの、これまでに提唱されてきた線維モデルに近似した構造を形成していることが分かった。また、凝集系タンパク質である絹フィブロインをモデルとしたNMR構造解析手法の確立についても研究を進め、成果は関連誌に発表している。さらに、精密な解析手法を本研究課題に取り入れるべく、スイス・チューリッヒ連邦工科大学、Beat Meier教授の研究室に3ヶ月間滞在、内部回転角を精度良く決定することが可能なDOQSY法を用い、様々な凝集ペプチドについて測定・解析を行った。特に解析手法に関しては、Meier教授らが独自に開発した手法であり、分布を有した構造を定量的に評価することができる。本研究では、あらかじめ合成した、凝集ペプチドである、野蚕系絹フィブロインおよびクモ牽引糸モデルペプチド、10種類について行ない、構造分布も踏まえた内部回転角の決定を行うことができた。今後は他の凝集ペプチドにこの手法を適用することで凝集系ペプチド精密構造構築手法を確立し、最終的にAβペプチドにこの手法を適用、構造分布を踏まえた凝集構造の提案を行う。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (4件)
Biomacromolecules 7(In press)
Biomacromolecules 6
ページ: 3220-3226
Macromolecules 38
ページ: 3356-3363
Protein Sci. 14
ページ: 2654-2657