研究概要 |
Fixed-base型のドライビングシミュレータ(DS)を活用し都市内地下道路における覚醒水準低下の可能性を明らかにした先行研究をうけ,区間途中に存在する分合流部位置情報を音声で提供するシステムによる覚醒水準維持の効果を分析した.運転者の覚醒水準は瞬き頻度により計測した.その結果,情報提供がない場合には統計的に有意に覚醒水準が低下しているが,情報提供がある場合には統計的に有意な低下は認められず,情報提供によって高い覚醒水準が維持できる可能性を示唆することが出来た. 続いて,先行研究で使用したFixed-base型DSの狭い可視範囲と体感加速度模擬がないといった欠点を解消するため,新たに,従来にはないコンセプトでMotion-base型DS(MOVIC-T4)の開発を行った.MOVIC-T4では,ヘッドマウントディスプレイと頭部トラッキングセンサーを組み合わせることで360度視野角を達成し,運転時の体感加速度を小型の2自由度モーションベースで再現した.併せて,より信頼性が高く,時間分解能の高い覚醒水準指標である皮膚電位水準のリアルタイム計測装置の開発も行った. 開発したMOVIC-T4の基本性能を検証するために,実道走行データとの比較を行った.走行実験はアクアライントンネル部で行った.MOVIC-T4と実道の両走行データを統計的に比較した結果,走行速度には差はなく,車間距離に関してはMOVIC-T4で若干過大評価を行う傾向にあるが,その差は小さい.また制動挙動に関してはMOVIC-T4で過大に減速度が生じる傾向にあり,走行安全性分析で得られる結果の解釈時に注意する必要があることを明らかにした.生体反応データの変動に関しては,その絶対値に若干の差はあるものの,変動の傾向には有意な差は認められなかったことから,条件間の相対比較には問題なく使用可能であることを明らかにした.
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