基礎教育の普及は開発途上国の発展にとって必要不可欠な問題である。それは最貧国の一つであるラオスも言える事であるが、ラオスの場合その特徴的な性質として多民族国家であることがあげられる。特に貧困層である少数民族への基礎教育普及は現在も困難を極めており、これがラオスの基礎教育普及にとって大きな問題となっている事が仮定として考えられる。しかし未だ、民族間での教育格差の現状とその要因に関しては把握、解明されぬままである。本研究は現地調査によって、そのような民族間にどのような教育格差・不平等性が生じているか、また少数民族への基礎教育普及停滞の要因を探り、民族間での教育格差をもたらす要因を明らかにするものである。その手段として、通常の定性的分析の他に定量的分析を行うことで、既存研究において解明されなかったラオス教育開発の停滞と社会、民族、文化、経済との関連性、を明らかにする事を試みた。特に、現在ラオスにおいて対応がせまられる貧困とその削減に向け、教育の果たす役割と、そこに少数民族問題がどのように関係しているかについて焦点を当てた。 特に今年度は、教育が所得の向上とどのような関係性を持つのか分析を行った。具体的には、ラオス、ヴィエンチャン県カシー郡において、郡教育事務所協力の下、インタビュー、質問紙調査や参与観察を含む定性調査を行い、所得向上のメカニズムを分析枠として回帰分析モデルを設定し、所得向上に関係する教育条件とその特色について分析した。その結果、教育段階の中でも前期中等教育の重要性が示され、初等教育だけでなく、政府教育開発計画における前期中等教育開発の整合性が問われることになると考えられる。
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