本研究の目的は、ソロモン諸島マライタ島に産するマントル捕獲岩から初源的な微量元素濃度や放射起源同位体組成を主とする地球化学的情報を正確に抽出し、オントンジャワ海台を形成したとされる南太平洋スーパープルームの起源に制約を与えることである。前年度の研究結果である、浅部マントルが海台とは成因的に無関係である古い海洋リソスフェアから構成されることを受け、本年度はプルームの起源物質に相当する可能性が高い深部由来の岩石を対象とした。鉱物分離試料に対するICP-MS、TIMSを用いた微量元素濃度分析、及びSr-Nd-Pb-Hf同位体分析の結果、多くの岩石の同位体初生値は海台玄武岩のそれを中心に狭い範囲に集中しているが、それらと同位体的に極めて異なる含石英ざくろ石単斜輝石岩は、0.5-1.0Gaに分化した大陸下部地殻に類似した微量元素濃度・放射起源同位体組成を持つことが判明した。これらの結果から、海台を形成した南太平洋スーパープルーム起源物質には、ロディニア超大陸の合体・分裂によりマントル深部に持ち込まれた大陸下部地殻物質が含まれているというモデルを初めて提示した。このモデルは先行研究により示唆されていた比較的未分化な下部マントル物質の存在を覆すものである。この結果についてAGU(サンフランシスコ)においてポスター発表を行った。また同結果は論文としてまとめられ、Science誌に現在投稿中である。
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