研究概要 |
LaGaO_3系酸化物の伝導機構の解明を最終目標に,前年度はLaGaO_3(LG),LaGa_<0.9>Mg_<0.1>O_<2.95>(LGM91),La_<0.9>Sr_<0.1>Ga_<0.9>Mg_<0.1>O_<2.9>(LSGM9191)の高温中性子回折測定を実施し,室温〜800℃における結晶構造を明らかにした。その結果、LSGM9191が高い酸化物イオン伝導性を示す要因としてGaO_6八面体が緩和されたことおよび自由体積が大きいことを見出した。しかし、LGM91とLSGM9191では、酸素欠陥濃度が異なるため、酸化物イオン伝導特性との関係について議論するには不十分であった。そこで、本年度は酸素欠陥濃度が等しいLaGa_<0.8>Mg_<0.2>O_<2.9>(LGM82)を合成し、室温〜800℃における結晶構造解析とイオン伝導度測定を行い、LSGM9191と比較検討した。 LGM82の酸化物イオン伝導度を測定した結果、酸素欠陥濃度が等しいにもかかわらず、LSGM9191の方が酸化物イオンは拡散しやすい環境であることが示唆された。この結果について結晶構造解析結果より考察を行った。LGM82の結晶構造は室温から500℃まで斜方晶系(Ibmm)、800℃では菱面体系(R-3c)であることが分かった。LSGM9191の低温の結晶構造(単斜晶系)とは異なることが分かった。しかし、高温の結晶構造は同じであった。LGM82の構造は他の試料と同様にGaO_6八面体が傾いてあり、温度の上昇に伴い、GaO_6八面体の傾きが緩和されていた。LSGM9191と比較すると、LGM82の方がGaO_6八面体の傾きは大きいことが分かった。GaO_6八面体の傾きがより緩和されている方が、酸化物イオンが容易に拡散しやすいと報告されている。この結果は導電率の結果を支持すると考えられる。更なる考察をするために、酸化物イオンが拡散すると考えられているボトルネックの大きさについて検討した。酸化物イオンのイオン半径を考慮すると、ボトルネックは大きいほど、酸化物イオンは拡散しやすいと考えられる。そこで、LGM82とLSGM9191のボトルネックの大きさについて評価した。LGM82のボトルネックの大きさはLSGM9191のそれよりも大きいことが分かった。この結果は導電率の結果と矛盾する。この点については今後の検討が必要である。
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