研究概要 |
第一に、T4リゾチームのフォールディング反応を詳細に解析し、これまでの報告とは異なり、律速となる遷移状態の前に中間体は存在しないことを示した。一方、律速段階の後には中間体が一つ存在することを示し、その立体構造と運動性をNMRを用いて明らかにした。さらに20種類の変異体を作成し、野生型との安定性及びフォールディング速度の比較から、遷移状態の構造を明らかにした。以上の結果をまとめ、「Journal of Molecular Biology」誌に二本の論文として発表した。 第二に、ヌクレオソームの構造とダイナミックスを、試験管内再構成系を用いて解析した。ショウジョウバエ由来の4種類のピストン(H2A, H2B, H3, H4)と、ヌクレオソーム局在化配列を12個タンデムに含む二本鎖DNAから、ヌクレオソームアレイを試験管内で再構成する実験系を確立した。再構成したヌクレオソームアレイが低濃度のMgCl_2の添加に伴い、さらにコンパクトに折れたたまった30nmクロマチン繊維を形成することを明らかにした。ピストンH2AがそのバリアントであるHtzに置換されることにより、ヌクレオソーム及び30nmクロマチン繊維の安定性が大きく変化することを見出した。ヌクレオソームを構成する(H2A-H2B)二量体、(H3-H4)_2四量体の解離について検討した。また、5SrRNA由来の146塩基対のDNAとピストン八量体から、モノヌクレオソームを再構成し、良質な結晶を得た。
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