DNA複製のラギング鎖のRNAプライマーは、DNA複製の最終過程で副産物として鋳型鎖から引き剥がされ、FEN1によって構造特異的に切断除去される。また、FEN1の酵素活性は、DNAスライディングクランプであるPCNAと相互作用することによって、大幅に促進される。本研究では、分解能2.9ÅでヒトFEN1とPCNAの複合体の結晶構造解析に成功し、FEN1の触媒ドメインとPCNA結合領域の間にヒンジ領域があることを同定した。このヒンジを軸として、PCNAに結合したFEN1の触媒ドメインの配向が規則正しく変化することによって、FEN1の酵素活性が促進されることを我々は提唱し、投稿論文にまとめた。 本研究課題では、FEN1の触媒機構やPCNAによって活性が促進される機構を詳細に理解することを最終的な目標として、基質であるDNAを含めた、DNA-FEN1-PCNA複合体の結晶構造解析を推進している。現在までに、DNA-FEN1-PCNAの3分子が溶液中で安定に複合体を形成する条件やその組成比を絞り込み、3分子複合体の結晶を作製することに成功した。この結晶について、放射光施設SPring-8で低分解能ではあるが、X線回折データを収集することができた。 立体構造を決定するためには、さらに高分解能の回折データを収集する必要がある。そこで、FEN1-PCNA複合体の立体構造や既に報告されている生化学的なデータを参照して、結晶化に適すると思われるFEN1のコンストラクトを作製すると同時に、DNAの塩基配列についても検証し直した。現在、これらの試料を用いて、再度、系統的に結晶化条件を検索しているところである。
|