研究概要 |
本年度は,時間知覚過程における脳内活動の時間的変遷に焦点を絞り研究を行った.人の頭皮上から得られた脳波から脳内活動を推定するLORETA法(Low-Resolution Brain Electromagnetic Tomography)を用いる手法と,動物の脳内から直接時間知覚過程に関与する領域の脳波を測定する手法の2つのアプローチを用いた.人を対象とした実験では,2つの音の間隔を判断させる間隔弁別課題(時間知覚を必要とする課題)と2つの音の異同を判断させる音程弁別課題(時間知覚を必要としない統制課題)を参加者に行わせた.その際に両課題で観察された随伴性陰性変動(contingent negative variation : CNV)の電流源をLORETA法により推定し,両課題で推定された脳活動を比較した.その結果,右背外側前頭前野の活動は音程弁別課題よりも間隔弁別課題において大きくなっていた.このことは,時間知覚過程において右背外側前頭前野が重要な役割を果たしていることを示唆している.この知見は国際学会(ISBET2004)において公表し,国際誌(ICS : Onoda et al.,2004)に掲載されている.動物を対象とした実験では,2つの音の間隔を判断させる間隔弁別課題(時間知覚を必要とする課題)と2つの音に対して反応を求める単純反応課題(時間知覚を必要としない統制課題)を行わせた.両課題で得られた事象関連電位(event-related potential : ERP)の差異は時間情報処理を反映する.前頭葉,線条体及び視床は,課題間のERP波形の差異を同じ潜時帯において示していた.この結果は,視床を介する前頭葉-線条体ネットワークが時間情報の処理を行っていることを示している.この知見は国内誌(行動科学:小野田,2004)に掲載されている.
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