本年度は、帝国教育会における教育研究活動の実態を把握し、かつ、その教育政策立案過程における取り扱われ方を明らかにするため、研究を進めた。本年度の研究成果は、以下の5つである。 第1に、全国地方教育史学会第29会大会にて、「明治期における教育会の情報交換」と題して発表したものである。全国に拡がる教育会の教育情報ネットワークの中に帝国教育会を位置づけた。これにより、帝国教育会における教育研究活動の普及ルートが判明した。 第2に、教育史学会第50回大会にて、「明治期大日本教育会・帝国教育会像の再構築」と題して発表したものである。明治期帝国教育会の膨大な先行研究を整理し、新たに教育研究団体としての歴史像を提示した。これにより、帝国教育会における教育研究活動が本格的に位置づけられた。 第3に、中国四国教育学会第58回大会にて、「明治期帝国教育会における道徳教育研究活動」と題して発表したものである。明治34年〜35年の帝国教育会における公徳養成唱歌・理論研究活動の実態を明らかにした。これにより、明治30年代の帝国教育会における教育研究活動の実態が明らかになった。 第4に、『広島大学大学院教育学研究科紀要』第三部第55号に、「明治21年の大日本教育会における「研究」の事業化過程」と題して発表したものである。帝国教育会における教育研究活動の制度的根拠であった、「研究」事業規程が成立する過程を明らかにした。 第5に、梶山雅史編『近代日本の中央・地方教育会史研究』(2007年出版予定)に、「大日本教育会および帝国教育会に対する文部省諮問」と題して発表したものである。教育政策立案過程における帝国教育会における教育研究活動の位置づけを行った。
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