哺乳類JNK経路は、JNK(MAPキナーゼ:MAPK)、MKK7(MAPKキナーゼ:MAPKK)、MLK(MAPKKキナーゼ;MAPKKK)という三種類のキナーゼによって構成され、様々なストレスに対する応答に機能している。また、この経路はMAPKホスファターゼ(MKP)のひとつであるMKP-7によって負に制御されている。これまでに我々は、線虫において、JNKホモログであるKGB-1、MKK7ホモログであるMEK-1、MLKホモログであるMLK-1がキナーゼカスケードを構成しており、この経路が個体レベルでの重金属ストレス応答に機能していることを明らかにしてきた。また、この経路はMKP-7ホモログであるVHP-1によって負に制御されており、vhp-1欠失変異体はKGB-1の異常な活性化のために致死になることを見いだしてきた。しかしながらKGB-1経路の上流および下流で機能する因子は不明であり、それらの因子の同定は個体レベルでのストレス応答機構を解明する上で不可欠である。そこで、我々は、vhp-1変異表現型抑圧変異体の分離および解析によって、KGB-1経路周辺因子の同定を試みている。これまでに72系統のvhp-1変異表現型抑圧変異体を分離しており、現在、これらの変異体について解析を行っている。今後、vhp-1変異表現型抑圧変異体の原因遺伝子を同定することによって、個体がどのようにストレスを認識し、どのようにストレス耐性を獲得しているかを明らかにすることができると期待している。
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