1.社会主義市場経済下における牧畜民の生活経営戦略 社会主義的市場経済が進むなかで、近年は砂漠化に代表されるような環境問題が深刻化している。著しい自然環境および社会環境の変動下において、牧畜民の社会経済的動態を、牧畜経営、政策に焦点をおいて調査研究をおこなっている。2004年11月から12月にかけて中国内モンゴルエチナ旗およびオルドス地域でフィールド調査を実施した。これまでの調査で明らかにされたことは、牧畜民は変化に翻弄されるのではなく、政策や市場経済を積極的に取り込んで、生活を営んでいるということである。 2.中国内モンゴルにおける環境保全政策 上記の研究を踏まえたうえで、中国政府が実施する環境保全政策について調査研究をおこなっている。 エチナ旗では、「生態移民」政策について、オルドスでは、「退耕還草」政策について、政策決定者、および政策対象者に調査をおこなってきた。これまでの調査研究で明らかにされたことは、生態移民に代表される乾燥地に対する環境保全政策が、必ずしも環境保全に有効でないことである。持続可能な環境保全のためには、地域の民俗知にもとづいた政策が重要であることを指摘した。その成果の一部を、2004年7月に北京で開催された国際シンポジウム、「生態移民:実践と経験」で「エチナ旗の畜舎飼育型「生態移民」の事例報告」として報告した。 これらの研究成果を論文等で随時発表する予定である。 今後の課題は、牧畜民の社会経済的動態をより広いテーマ、宗教や自然観などからとらえることである。また、衛星データー等を使って、牧畜民の移動性と牧地荒廃の関連性を明らかにするとこである。
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