研究概要 |
土壌伝染性糸状菌Fusarium oxysporumは、小型胞子、大型胞子および厚膜胞子の3種の分生(無性)胞子を形成し、これらが自然界での伝染源、耐久生存器官として重要な機能を果たしている。本菌は、栄養豊富な完全培地では胞子を形成しないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)を唯一の炭素源とする培地では、ほとんど菌糸生育せず、小型胞子と大型胞子を大量に形成する。本研究では、完全培地とCMC培地における発現遺伝子群をEST (expressed sequence tag)解析とリアルタイムRT-PCR解析によって比較し、胞子形成関連遺伝子群を網羅的に同定するとともに、それらの発現ネットワークの解明を目指す。本年度の成果を以下に要約する。 1.完全培地培養時とCMC培地培養時のcDNAライブラリーを作製し、両ライブラリー由来のそれぞれ約1,300クローンの部分塩基配列を決定した。決定配列の比較によって,両ライブラリーからそれぞれ約540個の異なる遺伝子由来の独立クローンを同定した。両ライブラリーの独立クローンを比較したところ、共通なクローンは約20%であり、栄養成長時と胞子形成時の発現遺伝子群が顕著に異なることが明らかとなった。 2.CMC培地ライブラリーからのみ検出された430クローンについて、完全培地培養時とCMC培地培養時のmRNAをプローブとしてcDNAドットブロット解析を行い、胞子形成時に特異的に高発現する173クローンを選抜した。さらに、これらクローンについて、リアルタイムRT-PCR法によって発現レベルを定量解析し、胞子形成時に特に高発現する54クローンを同定した。
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