本研究は、接続性の異なるナノ多孔体を用いて、超流動及びボース凝縮に対する原子薄膜の接続次元性の影響を調べることを目的としている。この目的を達成するために、孔径2.7nmの細孔が孔径の2倍程度の長さで規則的に3次元接続されているナノ多孔体であるHMM-2を用いた測定用セルと、孔径2.8nmの細孔が300nm程度の長さに渡って1次元トンネル状となっているFSM-16を用いた測定用セルを用意した。二つの多孔体中に吸着したヘリウム4の吸着圧力測定の結果を解析することにより、二つの多孔体中に層状の膜形成が約2層分の吸着量まで起こることが明らかとなった。また、その比較から二つの多孔体中でヘリウム4の膜成長がほとんど同じであることが明らかとなり、二つの多孔体に吸着したヘリウム4のふるまいの違いが、主に次元性によるものとして解釈できることが明らかになった。二つの多孔体中のヘリウム4に対する簡単な超流動測定と比熱測定から、どちらの多孔体中でも超流動状態が出現することが明らかとなっているが、HMM-2中では超流動転移点近傍に比熱のピークが現れるのに対し、FSM-16中では比熱のピークが現れないことがわかっている。HMM-2中のヘリウムに対して見られた比熱のピークと超流動転移との関連を明らかにするために、比熱と超流動の同時測定を行う測定系を開発し、その結果、比熱のピークと超流動オンセット温度は、実験誤差内(約10mK)で一致していることが明らかになった。現在、より精度を上げる試みを行っている。
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