研究概要 |
古代DNAを用いた遺跡出土コウノトリ科、トキ科、ツル科の同定法の確立、ミトコンドリアDNAの重複を考慮した古代DNAに基づくアホウドリの集団構造の再検討、遺跡出土ガン亜科の種同定と家畜個体の識別の3つをテーマに研究した。コウノトリ科、トキ科、ツル科の同定は、汐留遺跡(東京都港区・江戸時代)の出土試料を対象とした。Eda et al.(2006)のプライマーを用いて分析した結果、同遺跡のコウノトリ科はコウノトリ(Ciconia boyciana)を、トキ科はトキ(Nipponia nippon)を、ツル科はナベヅル(Grus monacha)あるいはクロヅル(Grus Grus)を含むことが明らかになった。アホウドリの集団構造の再検討では、まずアホウドリ科のThalassarche属で近年発見されたミトコンドリアDNA配列の重複(Abbott et al.2005)がアホウドリ属(Phoebastria)にも共通することを確認した。次に、浜中2遺跡(北海道礼文町・オホーツク文化期)出土のアホウドリ(P.albatrus)遺体のDNA解析の結果(Eda,2005,Dr's thesis)を再検討した。その結果、認識されていた3つのクレードのうち、1つのクレードは異なる制御領域のコピーに由来することが示唆されたものの、配列の再解析の結果、当時アホウドリに2つの集団があったことが支持された。ガン亜科の種同定と家畜個体の識別については、解析領域が少ないことによる誤判別の可能性を減少するために新たなプライマーを設計し、同定法をより頑健にした。また、出島和蘭商館跡遺跡のガン亜科遺体を分析し、骨髄骨を含むガン亜科の骨を検出した。骨髄骨は産卵期の雌の骨中にのみ二次的に形成される骨である一方、現在野生のガン亜科は日本で繁殖しない。このことから同遺跡ではガン亜科の家畜個体が利用されていたことが示唆された。
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