1.疎水性膜を壁膜とするマイクロカプセルの分散媒交換時の体積変化 エタノール溶液にジオクチルフタレートを内包したポリウレタンウレアマイクロカプセルを分散させた。顕微鏡で観察されたマイクロカプセルは一定の時間(2秒〜数分)形を保った後、S字型に急激に膨張し、その後、緩やかに収縮した。形が一定に保たれた時間はアレニウス型の温度依存性を示した。また分散前のマイクロカプセルのサイズに依存しなかった。この形が保たれる時間は、マイクロカプセル膜の内側に分散媒が浸透するために必要な時間と考えられる。アレニウス型の温度依存性を示すこととサイズ依存性を示さないことは、この反応が核生成・成長機構によって起こるとすると説明することができる。 2.化学架橋タンパクゲルの構造と物性及び応用 タンパク質水溶液に無毒な天然物を溶かし光照射することで化学ゲルを調製する方法を見いだした。タンパク質の種類に関係なく化学架橋でき、かつ生体吸収性に優れた材料であることから、バイオセンサーや再生治療の細胞足場材としての応用が考えられる。 3.拡散と高分子の構造相転移に基づくゲル中におけるパターン形成 ある天然多糖類の水溶液に特定の金属イオンを拡散させることで液晶相と等方相からなる周期的なバンド構造を凍結した高分子ゲルが調製できることを見いだした。クロスニコル下での観察の結果、複屈折を示す液晶領域がリーセガング現象を示す巨視的なバンドパターンを形成していることが明らかになった。バンド間隔、及びバンドの幅は金属イオンの初期濃度の増加とともに減少した。この液晶相の巨視的なパターン形成は、金属イオンが拡散することで、多糖と金属イオンの錯体が凝集及び液晶化し、核生成とそれに続く粒子成長過程により凝集体の分布を局所的に不均一することから生じると考えられる。
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