SOCS分子はサイトカインシグナル経路を抑制的に制御し、免疫制御機構においても主要な分子である。SOCS3ノックアウトマウスは胎生致死であり、成体における詳細な機能は不明であった。我々はT細胞特異的SOCS3欠損マウスを作成し、T細胞の分化誘導や活性化制御へのSOCS3の関与を解析した。SOCS3flox/floxマウスとLck-creトランスジェニックマウスの交配により、T細胞特異的にSOCS3を欠損させたコンディショナルノックアウトマウスは野生型と比べ、胸腺、脾臓、リンパ節の大きさや細胞数に大差は無く、炎症疾患の発症なく経過した。しかし、胸腺T細胞のFACS解析において、CD4-CD8-DN細胞の割合が上昇、CD4+SP、CD8+SP細胞の割合は低下していた。DN細胞分画のDN3からDN4への移行障害を認めた。 L.major感染実験では、感染抵抗性に差はなく、Th1型免疫応答も等しく誘導されたが、SOCS3欠損CD4+T細胞はTGF_1、IL10産生が増強していた。そこでinvitro分化誘導で比較した。通常のIL4、IL12添加条件ではTh1型、Th2型とも野生型と同等に誘導されたが、IL10+TGF_1添加のTh3誘導条件では、SOCS3欠損T細胞がより強くTh3へ分化していた。SOCS3欠損T細胞はSTAT3活性化が遷延していたことから、TGF_1の発現にSTAT3が関与するのか、mTGF_1プロモーター領域を解析したところ、STAT3結合配列が存在し、IL6刺激や活性型STAT3cによりプロモーター活性が増強した。ChIPassayでは、IL6刺激下で、TGF_1プロモーターへのSTAT3のリクルートが証明された。以上の結果よりSOCS3はT細胞の初期分化に関与しており、STAT3の活性調節を介し、CD4+T細胞のTh3型分化誘導を制御していることが示唆された。
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