1.土器の^<14>C年代測定 従来、土器の年代を知るためには、付着炭化物を分析する方法が用いられてきた。これに対し本研究では分析試料として、中国から東南アジアにかけて分布し、籾殻等の炭素を吸着させて着色する黒色土器など、作成時の炭素が含有された土器片を測定することを目的とし、土器試料の採集、分析を行った。 16年9月にフィリピンにて遺跡出土の黒色土器を採取した。また11月にもフィリピンに渡り、現在も黒色土器を作成している現場にて黒色土器作成過程の調査をおこなった。作成された土器を持ち帰り、比較試料として分析作業を行っている。また8月に中国山東省で黒陶と呼ばれる土器を採集した。地域によって炭素安定同位体比に差が現れることが確認され、この手法から稲作の起源を探る試みを行っている。 2.日本近海における海洋リザーバー効果の臓査 AMS法の高精度化により浮かび上がった海洋リザーバー効果の影響は、正確な年代測定をおこなう上で重要な問題となっている。特に人骨に関してはその影響の程度までを把握する必要がある。本研究では、日本海近辺における海洋リザーバー効果の大きさを調査するため、対馬市、佐賀貝塚出土の動物骨、魚骨の採取を行った。 3.フィリピン、ルソン島北部ラロ貝塚群の編年 フィリピン、ルソン島北部のラロ貝塚群からは先述の黒色土器、ポリネシアのラピタ土器との関連が示唆される赤色土器などが確認されている。両土器ともに有文から無文へという編年的変化が想定され、無文黒色土器群の文化期は1500BP〜1000BP cal BPという結果が得られている。今年度の研究により、剥片石器群の文化期は6700〜4100calBP、有文赤色土器群の文化期は4100〜3600calBP、無文赤色土器群の文化期は3500〜3000calBP、有文黒色土器群の文化期は2300〜1500calBPという範囲の年代がえられた。
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