研究概要 |
1.フィリピン、ラロ貝塚群の編年 フィリピンのラロ貝塚群について、出土遺物の^<14>C年代測定により遺跡の年代を決定し、貝塚群全体の編年を試みた。その結果、剥片石器群は6700-4100cal BP、続く赤色土器は4100-3600cal BP、無文赤色土器の文化期は3500-3000cal BP,有文赤色土器の文化期は2900-2400cal BP、有文黒色土器の文化期は2300-1500cal BP、無文黒色土器の文化期は1500-1000cal BPという範囲の年代がえられた。人骨に関して、現生の魚貝類、植物および貝塚出土の動物骨試料を用いた食性分析の結果、当時の人々の主要なタンパク源は陸上動物、淡水生物に依存しており、海洋リザーバー効果の影響は無視できることが示唆された。 2.現代黒色土器の炭素動態調査 フィリピンの現代の黒色土器は、籾殻の炭素を吸着させて着色する技法が用いられている。昨年度の黒色土器作成過程の調査で作成された土器とその材料に関し、炭素含有率、安定同位体比、^<14>C濃度の測定をおこなった結果、胎土の炭素が焼成により除去された後、籾殻の炭素が土器表面に吸着されたことが確認された。^<14>C濃度の測定結果より、黒色土器表面は現代と同様の^<14>C濃度を示しており、年代測定に使用できる可能性が示唆された。 3.黒色土器の^<14>C年代測定 ラロ貝塚群出土の黒色土器片を使用して^<14>C年代測定をおこなった。その結果、炭素含有率の高い、保存状態のよい試料に関しては、土器群の編年の範囲に納まる年代値がえられた。 4.中国黒陶の炭素安定同位体分析 中国山東省の竜山文化に属する黒陶片の炭素安定同位体比を分析し、遺跡と同位体比を比較した。その結果、黄河流域ではC_4植物が主として使用されていたのに対し、山東半島東海岸部を南から北上するに従いC_3植物すなわちイネの使用が増加していったことが示唆された。
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