研究概要 |
1.緒言 低分子ゲルは、非平衡系で形成される分子集合体である。本研究ではこの点に着目し、分子集合体の特性をチューニングすることを試みた。 2.実験および結果 (1)機能性色素であるペリレンに様々な置換基を修飾した低分子ゲル化剤を複数合成した。ペリレンは修飾された置換基によって異なる光化学特性を示した。ある条件においてこれらを相溶させた一次元分子集合体が得られた。結果として、分子集合体の光化学特性をコントロールすることが可能であった(Angew. Chem. Int. Ed.,43,122(2004))。 (2)フェナントロリンを基体とした低分子ゲル中において、フェナントロリンからプロトン化フェナントロリンへのエネルギー移動が起こることを既に明らかにしている。この分子集合体に対してゾルゲル転写法を適用することによって、有機無機複合体を得ることに成功した。非常に興味深いことに、無機物と複合化することによって分子集合体が安定化された(J. Mater. Chem., in press)。 (3)核酸塩基部位を有する低分子ゲル化剤と相補的なポリヌクレオチドの複合ゲルを設計した。このゲル中では核酸塩基間の相補的な水素結合が働いており、これによってゲルの物性をコントロールすることができた(Chem. Commun 1996(2004))。 (4)機能性色素部位を有する水性低分子ゲルとカーボンナノチューブの複合化を試みた。これによって分散性の悪いカーボンナノチューブを水中に安定に分散することが可能であった。また、カーボンナノチューブと色素間の相互作用によって、色素の蛍光特性に変化が見られた(Chem. Lett.,33,1124(2004))。 3.総括 本研究では、機能性分子を基体とした低分子ゲル化剤を設計し、分子集合体中において特異な光化学特性が発現されることを明らかにした。また、これを機能性材料として展開するために、高分子や無機物などと複合化する方法を開拓した。
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