研究概要 |
本研究では、BMP2を応用した細胞導入法による象牙質・歯髄の再生法の開発を目的として、まず三次元培養システムであるpellet cultureを用いて歯髄細胞の培養を用い、従来のmonolayer cultureとの比較を行った。次にpellet cultureへBMP2を添加し基質形成促進および象牙芽細胞への分化促進作用を調べた。さらに細胞導入治療法として、生活歯髄切断面にpelletを移植した場合の修復象牙質形成促進効果について検討した。培養10日後、pellet cultureでは基質形成が進んでいた。21日後、pellet cultureでは象牙芽細胞の分化マーカーであるDspp enamelysin,およびPhexの発現がみられた。これより歯髄細胞のpellet cultureは従来のmonolayer cultureに比べて基質合成ならびに分化が促進されることが示唆された。BMP2をpellet cultureに添加すると、Dspp, enamelysinおよびPhexの発現が増加し、石灰化が促進された。同個体のイヌ生活歯髄切断面にBMP2添加pelletを移植すると無添加pelletに比べ修復象牙質形成促進が見られた。歯髄細胞はpellet culture内で培養とともに基質形成、分化が進み、細胞自身が合成した基質が、外から取り込まれたBMP2あるいは細胞自身が分泌した細胞増殖分化因子を吸着保持すると考えられる。よって生体内にpelletを移植した際、必要に応じてBMPsなどを徐放する天然のscaffoldとして働いた可能性がある。これらの結果より、象牙質再生において、BMP2を添加した歯髄細胞pelletを用いた細胞導入治療法の有効性が示唆された。
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