研究概要 |
前年度までに代表者等の研究グループは、空間的に均一でプラズマ粒子はMaxwell分布を形成するものと仮定し、^6Li+D、^6Li+T反応で発生するγ線計測に基づく燃焼DTプラズマのイオン温度・燃料密度比診断法を提唱してきた。 今年度はプラズマ運動論的観点から、前年度までに提唱していたプラズマ診断法を再検討し、理論の精密化を試みた。検討内容と結果は以下の通りである。 1.運動論的モデル方程式(Boltzmann-Fokker-Planck方程式)を独自に構築し、さらに自己点火プラズマのパワーバランス条件も考慮に入れ、燃焼DTプラズマの燃料イオン分布関数を精密に評価した。その結果、3.5MeVα粒子との近距離弾性衝突により、燃料イオン分布関数の高エネルギー部に非Maxwellテイルが形成され、これによりγ線発生率が従来の見積もりより大幅に増大することが分かった。とりわけ、吸熱反応^6Li(t,p)^6Li^*で発生する0.981MeVγ線は、非Maxwellテイルにより発生率がイオン温度10〜30keVの範囲で4〜9桁も増大することが分かった。これは当初予想していなかった面白い結果である。 2.上記の解析結果に基づき、前年度までに提示していたイオン温度・DT燃料密度比診断シナリオを再検討した。すると、イオン温度診断のセンシティビティは従来の評価に比べて悪くなることが分かった。しかし、それでもなおγ線計測に基づくイオン温度診断は期待できることを確認した。一方、非Maxwellテイルの形成により、燃料密度比砂n_T/n_D診断のセンシティビティは向上し、プラズマ温度によらずn_T/n_Dを診断できることが分かった。
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